2019年

52回日本整形外科学会・骨軟部腫瘍学術集会より

中山富貴先生寄稿

  

妊孕性温存(大阪市大)

不妊と生殖医療について情報提供を行った8歳から44歳の患者28人(男性20女性8)についての報告。疾患は骨肉腫が最多で12名。希望があれば生殖医療専門医を受診してもらった。男性10/20、女性2/8が受診、男性8/10が精子保存した。女性は保存した例はなかった。女性では保存に時間を要するまたは卵巣の保存になることから現実に困難。

 感想

化学療法や放射線治療により不妊になる可能性のある患者さんの妊孕性温存については2017年に日本癌治療学会のガイドラインが刊行されるなど認知され患者への情報提供されるようになってきています。ただ女性患者については受精卵保存、未授精卵子、卵巣組織保存のいずれも実施数は少ないと推測されます。

 

小児がん治療後の長期生存者の増加で晩期障害についての適切なケアがますます重要になってきていると感じます。小児科から成人診療科への受け渡しも含めてフォローアップ方法の標準化が必要であり、社会的心理的問題へのサポートも引き続き充実させてゆく必要があると思います。

 


2014年

第47回 日本整形外科学会 骨・軟部腫瘍学術集会 

AYA世代患者>AYA:Adolescent and young adult

 AYA世代は小児腫瘍専門医と腫瘍内科医が治療する年代のはざまに位置し、日欧米とも集学的な治療体系が整っていないことが問題となっています。特に骨肉腫などはまさしくこのAYA世代が好発年齢です。この年齢層は患者の予備能も高くギリギリまで治療を求める状況です。またこの時期は精神、肉体とも成人へと成長する時期であり加えて社会的にも大きな変化を経験する時期です。AYA oncology として集学的な治療体系の構築が急がれているゆえんです。

 今回本学術集会では初めて「AYA世代の進行期肉腫の治療戦略」というシンポジウムが組まれました。治療法の問題、緩和ケアーの問題、妊孕性温存の問題、社会支援の問題 など についての議論がスタートしています。