2019年

52回日本整形外科学会・骨軟部腫瘍学術集会より

中山富貴先生寄稿

 

教育研修講演 こどものがんが治ったそのあと (埼玉医大小児腫瘍科 渡邊温子先生)

小児がんの発生は年間2000年から2500人。小児がんの70%から80%が治癒するようになり、子供の700人から1000人に1人が小児がんサバイバーである時代になった。小児がん経験者の死亡率は高く、がんの再発や二次がんなどが死亡原因となる。60%に晩期障害がみられ白血病よりも固形がん患者で多い。

二次がん発生率は20年で2-5%、30年で10%、一般集団の10倍である。二次がんとしてはアルキル化剤による骨髄異形成症候群(MDS)、トポイソメラーゼII阻害剤による白血病が多い。

他の晩期障害としては以下のようなものがある。

  心毒性:発症後の致死率20% アントラサイクリンによる心筋細胞障害安全域はない。

  聴器毒性:高音域の感音性難聴、シスプラチン360㎎(対表面積1㎡あたり、以下同じ)以上で発生しやすい。

  腎毒性:尿細管障害と糸球体硬化症、シスプラチン450㎎以上、イフォスファミド60-80g以上。

  骨:大腿骨頭壊死:年長児、デキサメタゾン使用、女性、肥満、放射線治療が危険因子。骨量減少もある。

  性腺機能:男性無精子症、イフォスファミド使用で多い。

 

化学療法予定患者の妊孕性温存療法については一部の自治体で公費補助が行われるようになった。担当医師から説明されることが多くなり男性では精子保存を希望されるケースが増えている。講演者の施設では説明を受けた男性25名中7名に精子保存が行われていた。女性は卵巣組織保存例が1名のみであった。妊孕性温存のために治療が遅れることは許容できないが、説明、情報提供行われるのが一般的になるだろう。

 

化学療法を行った小児骨肉腫治療後の成長について(大阪市大)

治療時18歳以下の骨肉腫の男児16名女児8名について身長を健常者と比較。治療前と最終観察時の双方で健常者と差がなかった。

 

小児(14歳以下)AYA世代(15-29歳)肉腫の機能予後と社会心理的課題(奈良医大) 

14歳以下22名、15-2928名の50名を調査した。75%の患者になんらかの日常生活の制限があり高校生大学生の患者では32%が留年あるいは退学を体験していた。33%が就労困難であり11%が家族との関係に問題を抱えていた。患肢温存患者と切断の患者で差はなかった。小児よりもAYAQOL(生活の質)が悪い傾向があった。

 

感想

小児がん治療後の長期生存者の増加で晩期障害についての適切なケアがますます重要になってきていると感じます。小児科から成人診療科への受け渡しも含めてフォローアップ方法の標準化が必要であり、社会的心理的問題へのサポートも引き続き充実させてゆく必要があると思います。